インスタから転載

 

『天気の子』 新海誠 2019/JP

 

かなりよい商品だと思いました。パッケージとして完成されていますよね。とくに脚本が完成されていて、前半の突拍子もなさ(拳銃、天気の子でお金稼ぎ等々)を後半に勢いよく回収していく、前作同様の展開。大衆文化というものはこうでなくっちゃと思います。ただ、それだけの代物です。

この程度のものが肯定的に消費されていくのが今の日本そのものと言わざるを得ない。功利主義の罠をうまく回避しているようにみえて、愛でもないし、恋ですらなさそうな、単なる欲求で「世界の形を変えた」ことを誇らしげに語り、それを「ぼくらはきっと大丈夫」と悪びれることなく結ぶという力技に資本主義の末期を見せられました。

この「大丈夫」は、例えば、『もののけ姫』の「アシタカは好きだ、でも人間を許すことはできない」と、その厳しさにおいて、苦しさにおいて比べようのないくらい軽い。サンが引き裂かれていたあの台詞こそが愛であり、この「大丈夫」は単なる独我論でしかないのに、それをまるごと肯定しなさいという作り手の浅はかすぎる身勝手さを単純に許容してしまうのであればそれはあまりに悲しいことではないですか。宮崎駿高畑勲の遺産のある国でよくこういうものを作れたものです。

そもそも、「3年」という月日の悲しさをジャン・ルノワールは30分で教えてくれたじゃないか。映画を作るものとして、忘れたとも知らないとも言わせない。


ぼくらの祖父母がもがき苦しんだ20世紀を亡きものにする、本当によい商品ですわ。